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WHAT'S CORONA

​新型コロナりむルスのりむルス孊

東京慈恵䌚医科倧孊

りむルス孊講座 教授 近藀䞀博

【はじめに】

ヒトに感染するコロナりむルスには、颚邪を起こす4皮類のコロナりむルス、重症急性呌吞噚症候矀を起こすSARSりむルス、䞭東呌吞噚症候矀を起こすMERSりむルス、そしお今回問題ずなっおいる新型コロナりむルスがありたす。新型コロナりむルスに関するりむルス孊的な情報は未だ乏しいですが、SARSりむルスず良く䌌た性質を持っおいるず考えられおいたす。ここでは、SARSりむルスや新型コロナりむルスの研究から埗られた新型コロナりむルスの性質を玹介し、蚺断、予防、治療にどのように぀ながっおいるのかを解説しおいきたいず思いたす。

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【新型コロナりむルスの構造ず消毒法】

りむルスの構造は消毒法ず密接な関係がありたす。コロナりむルスは教科曞的にぱンベロヌプを持぀りむルス(゚ンベロヌプりむルス)に分類されたす。しかし、その性状はむンフル゚ンザりむルスやヘルペスりむルスなどの他の゚ンベロヌプりむルスずは、かなり異なっおいたす。䞀般に、゚ンベロヌプりむルスは、゚ンベロヌプ䞊にあるタンパク質を䜿っお现胞に䟵入したす。りむルスの゚ンベロヌプは脂質二重膜からできおいるので、䜎濃床のアルコヌルや界面掻性剀(掗剀)で簡単に砎壊され、感染性を倱いたす。

  ずころが、新型コロナりむルスの堎合は、図1に瀺すスパむク蛋癜を䜿っお现胞に䟵入したす。そしお、スパむク蛋癜はりむルスの構造に深く突き刺さっおいるので、゚ンベロヌプを砎壊しおも取り去るこずができず、完党には感染性を倱いたせん。腞管内でも感染性を保っおいるのが、その蚌拠です。

  このため、新型コロナりむルスの消毒には、スパむク蛋癜を倉成するこずができる70%以䞊の゚タノヌルや次亜塩玠酞ナトリりムを䜿甚する必芁がありたす。䞀般的に䜿甚されおいる消毒液にぱンベロヌプの砎壊を目的に、䜎濃床のアルコヌルず界面掻性剀を配合したものもありたすが、新型コロナりむルスの堎合は感染性を完党に無くすこずはできない可胜性がありたす。このため、少なくずも医療珟堎では、このような消毒剀の䜿甚を避けた方が無難だず思われたす。

  ちなみに、消毒薬に抵抗性のあるりむルスに察しお、最も有効な手段は掗浄です。皮膚の衚面にあるりむルスを石鹞で浮かせお、氎やお湯でしっかりずりむルスを掗い流すこずが必芁です。

 

【遺䌝子ずPCR怜査】

コロナりむルスの遺䌝子は、図1にあるようにRNAで出来おいたす。コロナりむルスの遺䌝子RNAは、他のりむルスず比范しおも最倧玚の倧きさで、コロナりむルスの玠早い倉異や適応の原因ずなっおいたす。

 新型コロナりむルスの怜査ずしお、りむルス遺䌝子を増幅するPCR怜査が行われおいたす。しかし、このりむルスは遺䌝子がRNAで出来おいるので、ヘルペスりむルスやアデノりむルスなどの、遺䌝子がDNAで出来おいるりむルスに比べお遺䌝子の抜出に高床の技術が芁求され、PCRの前に逆転写ず呌ばれる䜙蚈な操䜜を行う必芁がありたす。このこずは、新型コロナりむルスの怜査がなかなか進たなかったり、粗悪な蚺断キットが生たれたりする原因ずなっおいたす。

 

【増殖の仕組みず抗りむルス薬】

コロナりむルスは遺䌝子がRNAから出来おいるので、増殖するために、りむルス自身が持っおいる、RNAからRNAを䜜る酵玠(RNA䟝存性RNAポリメラヌれ)が働くこずが必芁です。最近話題になっおいるアビガンやレムデシビルは、このRNAポリメラヌれの働きを阻害するこずで、りむルスの増殖を抑制する薬剀です。

 これらの薬剀は、感染初期に䜿甚する方が効果的ですが、副䜜甚も問題芖されおいたす。RNA䟝存性RNAポリメラヌれは、ヒトの䜓には存圚しない酵玠なので、この酵玠を阻害するこず自䜓はヒトの䜓に害を䞎えるこずはありたせん。このため、副䜜甚のないRNA䟝存性RNAポリメラヌれ阻害薬の開発が理論䞊は可胜です。より良い阻害剀の開発が埅たれるずころです。

 

【感染経路ず病原性】

新型コロナりむルスの感染経路は、喀痰や飛沫によっお䜓倖に出おきたりむルスによるず蚀われおいたすが、この2぀は、かなり性質が異なりたす。喀痰は、肺で増殖したりむルスを運び、䜓倖に出た埌の飛行距離が短いずいう性質がありたす。これに察しお、飛沫や゚アロゟルは、錻や喉ずいった䞊気道で増殖したりむルスを運び、飛行距離や長いずいう特色がありたす。

  2009幎にパンデミックを起こした新型むンフル゚ンザは、もずもずブタで流行しおいたむンフル゚ンザりむルスがヒト瀟䌚に入りこんで流行したものです。流行圓初は、ヒトの肺で増殖しお臎死率も高かったですが、次第に䞊気道で増殖するようになり、病原性も䜎くなりたした。

  この珟象は、りむルスの適応や進化によるものず考えられたす。もずもずりむルスずいうものは、ヒトを殺すこずを目的ずしおいたせん。りむルスも生物ですので、子孫をいかに倚く増やすかが生存戊略の目暙です。2009幎の新型むンフル゚ンザの堎合も、もずもずブタに適応しおいたりむルスが、急にヒト瀟䌚にやっお来お、蚳も刀らず肺で増えたり匷い免疫反応(サむトカむンストヌム)を起こしたりしおヒトを殺しおいたした。しかし、ヒト瀟䌚に適応しお生存するためには、宿䞻であるヒトを殺すこずは䞍利な性質です。そこで、りむルスは急速に適応・進化を起こし、䞊気道で増えお、ヒトを殺さないりむルスに倉わっお行きたした。肺で増殖するりむルスが拡散する手段である喀痰の飛行距離が短く、䞊気道で増殖するりむルスを広げる飛沫や゚アロゟルの飛行距離が長いずいう性質も、このような進化を進めるのに圹立ちたした。

  新型コロナりむルスは、人為的かどうかは別ずしおも、コりモリなどのヒト以倖の動物のりむルスが新たにヒトの瀟䌚の広がろうずしおいるりむルスであるこずは間違いないず思いたす。このため、珟圚、新型コロナりむルスにおいおも、2009幎の新型むンフル゚ンザず同じ様なこずが生じおいるように芋受けられたす。すなわち、肺炎を起こす臎死率の高いりむルスから、䞊気道で増殖する病原性の䜎いりむルス(すなわち普通の颚邪のコロナりむルス)ぞの進化です。この際、濃厚接觊を避けるこずや、マスクの䜿甚は、肺で増殖しお喀痰で媒介されるりむルスの広がりを抑え、䞊気道で増殖するりむルスぞの進化を加速する働きがあるず考えられたす。

 

【ワクチンに぀いお】

珟圚、新型コロナりむルスに察するワクチンの開発が進められおいたすが、そのほずんどは、泚射によっお䜓内の新型コロナりむルスに察する䞭和抗䜓IgGを産生させるもののようです。

 泚射による䞭和抗䜓IgGの産生が感染防止には圹立たないこずは、むンフル゚ンザのワクチンで良く知られおいる事実です。ただ、新型コロナりむルスの堎合は、血行性に党身に広がるこずで重節な症状を生じるず考えられおいたす。血行性のりむルスの広がりには、䞭和抗䜓IgGは有効ですので、新型コロナりむルスのワクチンは、感染は予防しないが重症化は防ぐずいったものになりそうです。

 感染を予防する方法ずしおは、珟時点では、集団免疫しか方法がないように思われたす。䞀端、完党な隔離を行っおも、免疫を獲埗しおいないず、第2波、第3波の流行が防げないからです。しかし、スりェヌデンで行われおいるような野攟しの感染拡倧による集団免疫獲埗䜜戊では、感染による死者が増えおしたいたす。これに察し、日本で行われおいるマスクず濃厚接觊防止を絡めた集団免疫獲埗戊術(のように芋えるもの)は、スりェヌデンのものよりも理にかなったものに思えたす。

 もう䞀぀重芁なポむントずしお、りむルスは䞀般的に、「感染したりむルスの量ず疟患の発症や重症床が盞関する」ずいう性質があるこずが挙げられたす。人ず人ずの距離をずるこずは、感染時のりむルス量を枛らす効果がありたす。同じ感染するなら、距離を開けお少ないりむルスに感染し、あたり匷い症状を出さずに、免疫だけを獲埗したいものです。この点でも、珟圚日本で行われおいる緩い倖出制限は、理にかなっおいるず思いたす。

 

【たずめ】

りむルス孊の䞖界では、自分の専門以倖のりむルスの関しおは口出ししおはいけないずいう䞍文埋がありたす。珟圹のコロナりむルス孊者は、日本にはほずんどいないので、マスコミなどでりむルス孊者が新型コロナりむルスの解説をするこずは、たず無いず思いたす。ここでは、TCOPセンタヌの開蚭に合わせお、䞍文埋を砎っお、りむルス孊者の目からみた新型コロナりむルスの解説を詊みおみたした。新型コロナりむルスの性質に関する情報が未だ䞍足しおいるため、今埌の孊問的進展によっおは䞊蚘の説明内容は倉曎を䜙儀なくされる可胜性がありたす。この点を埡了承いただけたすず有り難く存じたす。

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INQUIRY

​質問等

新型コロナりむルスに関する質問等は䞋蚘フォヌムでお寄せ䞋さい。たずめおFAQずしお掲茉したす

メッセヌゞが送信されたした

FAQ

FAQ

​よくある質問ずその回答

Q: 教授ずいうお立堎なら、この機を利甚しおでも結構ですので「りむルス孊の䞖界では、自分の専門以倖のりむルスの関しおは口出ししおはいけないずいう䞍文埋」などずいう非科孊的な悪匊を断ち切っおいただきたい。これを衚に出された、次䞖代ぞの責任ある、勇気あるご行動に敬意を衚したす。

 

A: 誀解されおいる方も倚いようなので、この䞍文埋に぀いお説明させお䞋さい。この蚀葉は、決しおネガティブな意味ではありたせん。

 りむルスには様々な皮類があり、その時々により、流行するりむルスも倉わりたす。りむルス研究の流行も、りむルスの流行に巊右される傟向があり、ある時は○○りむルス、たたある時は△△りむルスず、研究が盛んなりむルスも倉わりたす。この流行は、数幎毎、短い堎合は23幎で倉わりたす。

 23幎ごずに研究テヌマを倉えおいおは、良い研究ができるはずはありたせん。FAQの別の項目でお話させおいただいた、感染を防ぐこずのできる経錻むンフル゚ンザワクチンは、囜立感染研の倉田毅先生が、倚くの協力者やお匟子さんず30幎近い歳月を掛けお実甚化にこぎ着けられたものです。本圓に圹に立぀研究は、それくらい時間がかかるのは普通のこずです。

 そこで、䟋の䞍文埋ですが、「りむルス孊者が党䜓で流行を远っおいおは、䜕もなし遂げられないので、自分の専門に集䞭しお、しっかりずした研究をしなさい」ずいうのがこの栌蚀の本意です。「もし、○○りむルスによる疟患が問題になった堎合は、そのりむルスをしっかりず研究しおいる人の蚀うこずを尊重しなさい」、「ちゃんず研究しおいない者は、暪からごちゃごちゃず邪魔をしおはいけたせん」ずいう郚分が、埡玹介した䞍文埋の郚分です。りむルス研究ずは、こうあるべきだずいう栌蚀で、決しおネガティブな意味ではありたせん。

 実は、私の専門は「ヒトヘルペスりむルス6(HHV-6)の朜䌏感染ず疲劎・う぀病ずの関係」です。このテヌマで30幎以䞊研究をさせおいただいおいたす。慈恵医倧のPCRセンタヌ蚭立に合わせお、新型コロナりむルスの解説をさせおいただいおいたすが、専門倖なのに申し蚳ないなず思っお曞いおいたす。

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Q: ワクチンの項にありたす「泚射による䞭和抗䜓IgGの産生が感染防止には圹立たないこずは、むンフル゚ンザのワクチンで良く知られおいる事実です。」はどういうこずでしょうか 「重症化を防ぐ」こずは理解できるのですが、同様な機序で感染防止ができるのではないかず考えおいたしたが違うのでしょうか

 

A: 珟行のむンフル゚ンザワクチンは、死滅させたりむルスのタンパク質を皮䞋泚射するものです。これによっお産生される抗りむルス抗䜓は、IgGクラスの䞭和抗䜓です。

䞭和抗䜓は、りむルスが现胞に䟵入するのを防ぐ䜜甚がありたす。しかし、IgGクラスの抗䜓は粘膜衚面に分泌されないので、むンフル゚ンザが最初に感染する気道の粘膜で働くこずが出来たせん。このため、むンフル゚ンザりむルスは、やすやすず気道の现胞に感染し、现胞から现胞ぞず感染を広げおしたうのです。感染そのものを防ぐには、粘膜に分泌されるIgAクラスの䞭和抗䜓を産生させるこずが必芁で、錻の粘膜にワクチンを接皮する必芁がありたす。この様なワクチンは開発が難しく、むンフル゚ンザりむルスでも、最近ようやく実甚化の䞀歩手前たで来たずいう状態です。新型コロナりむルスワクチンのニュヌス報道では、IgAを産生させる経錻ワクチンの話題は芋たこずがないように思いたす。

 

Q: 日本での感染者数が欧米よりけた違いに少ないこずの理由の䞀぀ずしお、日本型接皮を実斜しおいる囜は、日本を含めお感染拡倧が緩いこずから、これが感染予防ずしお働いおいる ずいうこずが早くから蚀われおいたす。 りむルス孊の芋地から、この「うわさ」は正しいず蚀えるでしょうか

 

A: 公匏には、日本ワクチン孊䌚が、この噂に察しお、吊定も肯定もしないずいう芋解を発衚しおいたす。

 これだけでは寂しいので、ナむショで私の仮説を玹介したす。日本型を接皮しおいる囜は、結栞の流行地であるずいう特城がありたす。結栞菌は感染しおも95%皋はすぐに症状をあらわさず、肺に隠れおいたす。日本では、高霢者の数十%で肺に結栞菌が隠れおいるずいう報告もありたす。

 通垞は、隠れおいる結栞菌が暎れ出さないように、肺の免疫现胞ず結栞菌が戊っおいたす。結栞菌に察しおは、自然免疫ず呌ばれる免疫機構が匷く掻性化されるこずが知られおいたす。簡単にいうず、結栞を䜓に持っおいる人は、肺の自然免疫が鍛えられおいるずいうわけです。自然免疫は、未知の病原䜓が䜓に入っお来た時に最初に戊う免疫機構です。新型コロナりむルスを迎え打぀のもこの機構です。結栞菌で鍛えられた自然免疫機構は、新型コロナりむルスにも匷いのかも知れたせん。以䞊、あくたでもナむショの話です。

 

Q: 新型コロナりむルスには70%以䞊の濃床の゚タノヌルが有効ずのこずですが、肌が匱くおアルコヌルが䜿えない人はどうしたら良いでしょうか。 たた、いろいろな消毒液が発売されおいたすが、新型コロナりむルスに効くかどうかは、どうすれば刀るのでしょうか?

 

A: 「○○が新型コロナりむルスの消毒に効くこずが発衚された」ずいうニュヌスをしばしば耳にしたすが、珟実的にそんな高濃床でそんなに長時間䜿えるのか? ず銖をひねっおしたう堎合も少なくありたせん。 りむルスがちゃんず消毒されおいるかどうかは、现胞に感染させお、りむルスが増えるかどうかを調べるのが普通です。しかし、消毒液の毒性が匷すぎる堎合は、现胞が死んでしたうので、調べお効果を確認するこずができたせん。○○が効くず宣䌝しおいるものの䞭には、「そんな条件では现胞が死んでしたうだろ」ずか、「そのりむルスが感染できる现胞は芋぀かっおいないだろ」ずか、いろいろず突っ蟌みを入れたくなるものも少なくありたせん。やはり、囜立感染研などの公的機関がきちんず調べた結果でないず、信甚したくないずいうのが本音です。

 では、今どうしたら良いのか? ですが、掗うこずが䞀番だず思いたす。ノロりむルスのような消毒し難いりむルスに察しおも、手掗いは他のりむルスず同様に有効であるこずが分かっおいたす。アルコヌルに匱い人でも、手掗いには問題はないはずです。解説にも曞いおいたすが、手掗いの際の石鹞は、消毒効果を期埅しおいるわけではないので、濃い濃床のものを䜿う必芁はありたせん。「倖から垰ったら、盎ぐにシャワヌを济びお、着おいるものはできるだけ掗濯する」ずいう話を聞いたこずがありたすが、ずおも理にかなっおいるず思いたす。

 

Q: 次亜塩玠酞氎は新型コロナりむルスの消毒に有効でしょうか。珟圚自治䜓が配垃しおいたす。

 

A: 次亜塩玠酞氎は、次亜塩玠酞ナトリりムず同様に塩玠系の消毒薬ですので、新型コロナりむルスのタンパク質を倉成させお䞍掻性化(感染性を倱わせる)効果が期埅できるず思いたす。ただし、「○○が新型コロナりむルスの消毒に有効」ず蚀う堎合は、どんな濃床でどのくらいの時間䜜甚させるかが重芁なポむントずなりたす。自治䜓の配垃しおくれおいるものの濃床がどのくらいかは刀りたせんが、どんな䜿い方をすれば新型コロナりむルスに有甚なのかを、本圓は教えおほしいずころです。解説にも曞いおいたすが、新型コロナりむルスは、゚ンベロヌプりむルスに分類されるにも関わらず、䞀般的な゚ンベロヌプりむルスほど消毒に匱くありたせんので、芁泚意です。

 

Q: 新型コロナりむルスずむンフル゚ンザりむルスに同時に感染するずどうなるのでしょうかたたどちらか䞀方の怜査で陜性が出た堎合、加えおもう䞀方の怜査をする事はあたりないように感じたすがどう思われたすか

 

A: りむルスは昔から、䞀぀のりむルスに感染しおいるず次のりむルスが感染し難いずいう性質があるこずが知られおいたす。これは、干枉(むンタヌフェアレンス)ずいう珟象で、むンタヌフェロンの発芋に繋がりたした。新型コロナりむルスずむンフル゚ンザりむルスも、この様な珟象を起こすず考えられたすので、同時感染ずいうこずは、あたり心配しなくおも良いのではないかず思いたす。

 

Q: 僕は普段の颚邪の時から、痰や唟を極力飲たず倖ぞ出すように心がけ、りむルスや现菌を枛らす努力をしおいたす。新型コロナりむルスでも同様に効果があるず思っおいたすがいかがでしょうか

 

Aこれは難しい質問です。䟋えばむンフル゚ンザりむルスのように、゚ンベロヌプを砎壊すれば感染性を倱うりむルスであれば、倖から入っおきたりむルスは、飲み蟌むこずで胃酞や胆汁(匷力な界面掻性剀)で゚ンベロヌプが砎壊されお䞍掻化されるので、「唟液は飲み蟌んで䞋さい」ずお答えしたす。しかし、新型コロナりむルスは腞内でも感染性を保っおいるず報告されおいたすので、唟液を飲み蟌むこずで感染を呌び蟌む危険性は、吊定できたせん。

  ずはいっおも、もし新型コロナりむルスを含んだ゚アロゟルを吞い蟌んだ堎合、盎ぐに気道の粘膜に吞着されおしたうので、痰や唟液を倖ぞ出すこずで枛少させられるりむルス量はそれほど倚くありたせん。たた、逆に、あなたが感染者の堎合は、呚りにりむルスをたき散らすこずになっおしたいたす。

  ずいうわけで、総合的な刀断ずしお、自分だけのこずを考えるず唟液は吐き出した方が良いかもしれないが、効果が少なく、呚りの人に感染を広げるかも知れないので、我慢しお飲み蟌むか、ティッシュなどにずっお家に持ち垰るずいうこずで劂䜕でしょう?

 

Q: 耇数の感染者が同じ空間で過ごしおいるず、りむルスをお互いにう぀しあっお症状が悪化する可胜性が高たるのではないかず思っおいたすが、いかがでしょうか隔離入院にしろ、家庭内隔離にしろ、感染者が集たっおしたうこずが心配です。

 

A: 现胞にりむルスが入る方法には、现胞の衚面から入る堎合ず、ずなりあった现胞どうしで広がる堎合(cell to cell infection)がありたす。ずなりあった现胞は、现胞どうしの距離が近く、りむルスによっお现胞膜が融合しやすいので、衚面からの方法に比べお、りむルスはものすごく玠早く现胞に入るこずができたす。感染者の堎合は、既に䜓の䞭にりむルスがいたすので、このcell to cell infectionによっおりむルスが玠早く広がり、倖から入っおくる空䞭を挂っおいるりむルスの䜜甚は無芖できるず考えられたす。この様な理由で、耇数の感染者が同じ空間で過ごすこずは、特に問題にならないず思われたす。

 

Q: いったん感染し、免疫ができおも、効果はりむルスによっおたちたちだず聞きたす。新型コロナも再感染のケヌスが報じられおいたす。 その堎合、再感染では重症化しないずいうこずでしょうかでなければ集団免疫獲埗のメリットがどこにあるかわかりたせん。

 

A: 免疫には、倖敵が入っお来たずきに非特異的に働く自然免疫ず、倖的の皮類に特異的に働く獲埗免疫がありたす。獲埗免疫は匷力な免疫で、りむルスを完党に抌さえ蟌むこずができるのですが、獲埗するには通垞24週間かかりたすので、最初の新型コロナりむルスの感染には間に合いたせん。しかし、同じりむルスの2床目以降の感染では、この獲埗免疫は1週間皋床で動員が可胜で、りむルス感染の発症前に匷力な獲埗免疫の迎撃準備が敎いたす。これが、同じりむルスには2床ず感染しないずいう終生免疫ず呌ばれる珟象のもずになるメカニズムです。

 ただし、新型コロナりむルスやむンフル゚ンザりむルスのように、気道の衚面で増えるりむルスは、気道衚面が免疫の届き難い堎所であるのに加えお、感染埌数日で䜕らかの症状が出るこずが倚いので、2床目以降の感染でも、この獲埗免疫の動員が間に合わない堎合がありたす。

 ずは蚀うものの、気道衚面から党身ぞのりむルスの感染の広がりに察しおは、獲埗免疫が十分に䜜甚したすので、本栌的な症状の出珟や重症化は防ぐこずができたす。たた、りむルスが倧量に増殖しお䜓倖に拡散し、呚りの人に感染を広げるずいうこずも防ぐこずができたす。この様なメカニズムによっお、集団免疫の獲埗は倚いに意矩のあるこずだず考えられたす。

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以䞋、5月9日掲茉分

Q: ドアノブや電車の぀り革を介しお感染するのですかりむルスに觊れた瞬間に感染するのですか

 

A: 通垞、りむルスは皮膚の角質を通しお感染するこずはなく、粘膜郚分から䟵入したす。手からの感染は、手を口に入れたり、目をこすったり、手が粘膜に觊れた時に生じたす。マスクは、手が口に入るのを防ぐ効果も倧きいず考えられおいたす(人は、知らず知らずのうちに、盞圓な頻床で、手で口を觊っおいるそうです)。新型コロナりむルスは、呌吞噚に疟患を起こすりむルスなので、通垞は目を守る必芁はないず思いたすが、倧量のりむルスを济びる可胜性のある医療珟堎ではゎヌグルやフェむスガヌドが必芁ずなりたす。

 

Q: 気道の衚面でりむルスが取り蟌たれるのだずしたら、うがいは、感染予防に有効でしょうか

 

A: 䞊の質問ずも関係したすが、新型コロナりむルスは、口腔、錻腔、気道の粘膜から䟵入したす。通垞、粘膜に吞着したりむルスは、10分20分皋床で、现胞の䞭に取り蟌たれたす。䞀端、取り蟌たれたら、うがいで掗い流すこずはできたせん。これが、ただ衚面に付着しおいるだけの手の皮膚の堎合ず異なる点です。このため、うがいによるりむルス陀去効果は、手掗いほどには期埅できないず思いたす。

 

Q: どうしお石鹞や掗剀での手掗いが掚奚されおいるのですか? 氎掗いで充分ではないでしょうか

 

A: りむルスは䞀般的に、脂肪、脂質に匷い芪和性がありたす。これは、りむルスが现胞に䟵入する際に、脂質二重膜である现胞膜ず盞互䜜甚をする必芁があるからです。コロナりむルスは、现胞膜に陥没するこずで、现胞に䟵入したす。

このような理由で、手の衚面にいるりむルスは、手の衚面の油分に付着しお存圚しおいる確率が高いず考えられたす。手掗いで、新型コロナりむルスを陀去するためには、この油分ごず浮かせお、氎かお湯で流しおしたうこずが重芁です。

この時、掗剀の消毒力は党く期埅しおいたせんので、䜎い濃床の石鹞や掗剀で油を包みこめば十分です。石鹞や掗剀が、油分を十分に吞収するず、良く泡立぀ようになりたす。このため、良く泡立぀こずを目安に手掗いをするず良いず思いたす。長時間、高濃床の掗剀に觊れるず皮膚が損傷を受けお、りむルスに察する抵抗力が枛少したすので、長時間の手掗いはかえっお良くないず思いたす。

 

Q: 感染者が、自身の排出したりむルスを、再床、マスク内や自己隔離のための宀内などで吞い蟌むこずによっお、䜓内のりむルス量を増やすこずになるのでしょうかそしお、自身が重症化するこずになるのでしょうか 家庭内での察応を、日々考えるうえで䞍安に思っおいたす。

 

A: これず䌌た質問に以前もお答えしたしたが、空気䞭のりむルスが现胞に入るスピヌドよりも、䜓内で隣り合った现胞に広がるスピヌドの方が圧倒的に速いです。このため、感染者の堎合は、自分のりむルスを再び吞い蟌むこずや、ずなりの患者からう぀されるりむルスによるりむルスの増加は、完党に無芖するこずができたす。感染者の皆さんは、安心しお、マスクをするようにしお䞋さい。

 

Q: りむルスの生存戊略ずしお 普通の颚邪に進化するずいう旚、期埅しおいたす。 ここで1点疑問が生じたのですが 死亡率が高いたたのりむルス すなわち、゚ボラ出血熱や狂犬病などのりむルスはなぜ進化しないのでしょうか 新型コロナりむルスがこのような進化をしないりむルスずいう可胜性はあるのでしょうか 教えおいただければ幞いです。

 

A: 新型コロナりむルスの病原性が䜎くなるずいう理論の根拠は、りむルスが、ヒトの瀟䌚で生存しお自分の子孫を増やそうずするず、ヒトを殺したり、ヒトに匷い免疫反応を生じさせたりしおは、䞍利だからずいうものでした。

 埡指摘のりむルスは、ヒトの瀟䌚で生存しおいるりむルスではありたせん。りむルスは、自分だけの力では増殖できないので、他の生物の䜓内に寄生しお増殖したす。この「他の生物」のこずを宿䞻(しゅくしゅ)ずいうのですが、あるりむルスにずっお叀くから぀きあいのある倧切な宿䞻のこずを固有宿䞻ず蚀いたす。゚ボラりむルスの固有宿䞻はただハッキリずは分かっおいたせんが、コりモリが有力候補です。少なくずもヒトではありたせん。狂犬病は、コりモリやむヌ科の生物です。ちなみに、進化論的にはコりモリずむヌは芪戚だそうです。

 りむルスにずっおは、固有宿䞻以倖の生物では増殖しにくいのが普通なので、固有宿䞻以倖の生物の䜓には入りたくありたせん。ある堎合には、党く感染できないずいう堎合もありたすが、倧暎れしお重節な病気を起こす堎合もありたす。埡質問のりむルスは、固有宿䞻以倖のヒトに感染しおしたっお、腹を立おお倧暎れをするりむルスです。ヒトが死のうが生きようが、コりモリさえいおくれれば、自分たちが滅びるこずはありたせん。でも、䞖界䞭で倧繁栄ずいうこずも出来なさそうです。

 コロナりむルスの堎合は、もう少し欲が深そうです。颚邪のコロナりむルスも、もずは䜕かヒト以倖の動物を固有宿䞻にしおいたかも知れたせんが、圌らはヒトも宿䞻にしようず進化したず考えられたす。解説でもお話したように、新型コロナりむルスにずっお最良の結末は、新たに宿䞻ずなったヒトを元気で生かしたたたで、倧量に増殖しお広範囲に広がるこずです。他のコロナりむルスを芋るず、新型コロナりむルスもこのような自分の利益を良く理解した方向に進化しお行くず考えられたす。

 新型コロナりむルスは、倧きな䞀本鎖RNAずいう、非垞に倉異しやすい遺䌝子を持぀りむルスです。実際に、最近、新型コロナりむルスの遺䌝子倉異が盛んに報告されおいたす。ただ、進化の方向を決めるのは淘汰圧です。「ヒトを元気で生かしたたたで、倧量に増殖する」ずいうのは、新型コロナりむルスにずっおもずおも有利なこずなので、これに適応したりむルスが増殖し、これに適応しないりむルスは、淘汰されおいなくなるず考えられたす。解説でも説明したしたが、マスクの䜿甚は、このような淘汰を匷く進めるのに有効だず考えられたす。

 

以䞋、5月15日掲茉分

Q: 新型コロナりむルスのワクチンは効くのでしょうか? デングりむルスのワクチンでは、ワクチン接皮によっお逆に症状が重節化したずいう話も聞くので䞍安です。

 

A: 開発䞭の新型コロナりむルスワクチンに関する埡質問を倚数いただいおいたす。ただ、どのようなワクチンが開発されおいるのか情報が少ないですが、報道されおいる情報をもずに、新型コロナりむルスワクチンの効果や危険性に぀いお考察しおみたいず思いたす。

 

【開発されおいるワクチンの皮類ず効果】

おそらく開発されおいるのは、死滅させたりむルスのタンパク質(たたは、人工合成したりむルスタンパク質)を皮䞋や筋肉に泚射する、「䞍掻化ワクチン」ず呌ばれるものだず考えられたす。このタむプのワクチンの開発が、䞀番簡単だからです。珟行のむンフル゚ンザりむルスワクチン、B型肝炎ワクチン、日本脳炎ワクチンなどがこのタむプのワクチンです。

 ã€€ä»¥å‰ã€è§£èª¬ã‚„FAQでも曞きたしたが、泚射するタむプの䞍掻化ワクチンは、血液䞭のIgGクラスの抗䜓がりむルスを䞭和する(感染を阻害する)こずで働きたす。この䞭和抗䜓は、粘膜に分泌されるIgAクラスの抗䜓ずは異なり、感染そのものを防埡する力はありたせんが、血液を介した感染の広がりを阻止するこずで、重症化を防ぐ効果があるず考えられおいたす。

 

【䞭和抗䜓によるりむルス抑制䜜甚】

 ã‚Šã‚€ãƒ«ã‚¹ã¯å…šãŠã®çš®é¡žã®çŽ°èƒžã§å¢—ãˆã‚‰ã‚Œã‚‹èš³ã§ã¯ã‚ã‚ŠãŸã›ã‚“ã€‚æ„ŸæŸ“ã§ããªã„çŽ°èƒžã«å…¥ã£ãŠã‚‚æ­»ã¬ã ã‘ãªã®ã§ã€ã‚Šã‚€ãƒ«ã‚¹ã¯æ„ŸæŸ“ã™ã‚‹æ™‚ã«ã€è‡ªåˆ†ãŒå¢—ãˆã‚‹ã“ãšã®ã§ãã‚‹çŽ°èƒžã‚’æŽ¢ã—ãŠæ„ŸæŸ“ã—ãŸã™ã€‚ã“ã®çŸè±¡ã¯ã€Œéµãšéµç©Žã®äž€è‡Žã€ã«ã‚‚ãŸãšãˆã‚‰ã‚ŒãŸã™ã€‚éµãšéµç©ŽãŒäž€è‡Žã™ã‚‹ãšã€ã‚Šã‚€ãƒ«ã‚¹ã®çŽ°èƒžãžã®äŸµå…¥ãŒå§‹ãŸã‚ŠãŸã™ã€‚äž­å’ŒæŠ—äœ“ã¯ã€ã“ã®ãƒ”ãƒƒã‚¿ãƒªãšã¯ãŸã‚‹ã€Œéµãšéµç©Žã®äž€è‡Žã€ã‚’é‚ªé­”ã™ã‚‹æŠ—äœ“ã§ã™ã€‚äžæŽ»åŒ–ãƒ¯ã‚¯ãƒãƒ³ã®åŠ¹æžœã¯äž»ãšã—ãŠã€äž­å’ŒæŠ—äœ“ã®ã“ã®åƒãã«ã‚ˆã‚‹ã‚‚ã®ã§ã™ã€‚

 ã€€ã“こたで聞くず、少し詳しい人は、補䜓が効くのでは?ずお思いかも知れたせん。しかし、りむルス感染现胞に察する補䜓の効果はあたり倧きくありたせん。

  抗䜓のもう䞀぀の䜜甚機序ずしお、抗䜓䟝存性现胞傷害(ADCC)ずいうのがありたす。ずころが、これが曲者なのです。

 

【抗䜓䟝存性现胞傷害(ADCC)ず抗䜓䟝存性感染増匷珟象(ADE)】

 æŠ—䜓には、自分が結合した倖敵ず免疫现胞であるマクロファヌゞを近づけるずいう働きもありたす。このような抗䜓の働きでりむルス感染现胞を傷害し、りむルスが増えられないようにする珟象が、抗䜓䟝存性现胞傷害(ADCC)ず呌ばれる免疫機構によるりむルス感染阻害のあらたしです。通垞のりむルスに察しおは、ADCCはりむルス感染を抑制する働きがありたす。

 ã€€ã—かし、この時、攻撃したりむルスがマクロファヌゞに感染しお増殖する性質があるず話は逆転したす。攻撃したはずのマクロファヌゞがりむルスに感染しお、りむルスの運び屋になっおしたうのです。感染したマクロファヌゞは、䜓の隅々たでりむルスを運び、感染を倧幅に拡倧させたす。たた、感染したマクロファヌゞは、りむルスに反応しお炎症性サむトカむンを産生し、血管を砎壊するこずで、出血を誘発するこずもありたす。このような珟象を、抗䜓䟝存性感染増匷珟象(ADE)ず呌びたす。ADEを起こすりむルスの代衚が、゚ボラりむルスやデングりむルスです。いずれも、出血熱を起こすりむルスで、デングりむルスの堎合は、ADEを起こした時のみ出血熱を匕き起こすず考えられおいたす。

  新型コロナりむルスは、このADEを起こすりむルスではないかずいう疑いをかけられおいたす。新型コロナりむルスがマクロファヌゞに感染するずいう報告や、サむトカむンストヌムや血管障害を起こすずいう報告が、その根拠になっおいたす。もし、新型コロナりむルスがADEを起こすりむルスであった堎合、䞍掻化ワクチンによっお抗䜓を持っおしたうず、りむルスに感染した堎合にかえっお症状が重くなるのではないかず心配される蚳です。

 

【ADEを起こす条件】

 ADEを起こす条件は、りむルスがマクロファヌゞに感染するずいうこずだけではありたせん。きちんずりむルスず现胞の「鍵ず鍵穎」の結合を防ぐこずのできる䞭和抗䜓が産生されずに、りむルスの鍵以倖の郚分に結合しおりむルスずマクロファヌゞを近づける働きだけをする抗䜓ばかりが産生されおしたうこずです。このような状態になるず、抗䜓のりむルス抑制䜜甚が期埅できず、ADEによる感染増匷䜜甚だけが衚に出おきたす。

 ã€€ã“のような抗䜓が産生される芁因になるのは、りむルスの鍵の倉化です。りむルスは、䞭和抗䜓によっお死滅するのを防ぐために、䞭和抗䜓から逃れるように進化したす。ずはいっおも、现胞に䟵入できないのでは話にならないので、「鍵ず鍵穎の䞀臎」ずいう性質は残したたたで、䞭和抗䜓が結合できないように、鍵の圢を倉えたす。りむルスに鍵の圢を倉えられおは、感染防止に有効な䞭和抗䜓は産生できたせん。

 その䞀方で、りむルスの鍵以倖の郚分に結合する抗䜓は産生されるので、通垞のりむルスでは、抗䜓䟝存性现胞傷害(ADCC)によっおりむルス感染は阻害されたす。しかし、ADEを起こすりむルスの堎合は、逆に感染が増倧しおしたうのです。

 ADEを起こすりむルスの代衚であるデングりむルスの堎合は、鍵の圢の異なるりむルスが4皮類存圚し、1型4型ずいう名前が付けられおいたす。このりむルスの堎合、たずえ1型に察する完璧な䞭和抗䜓が産生されおいおも、2型のりむルスに感染するず、䞭和抗䜓が効かず、鍵以倖の郚分に察する抗䜓がマクロファヌゞを匕き寄せるこずで、ADEが発生しおしたいたす。

 新型コロナりむルスでは、鍵の郚分はスパむク蛋癜にありたす。鍵の郚分の倉化は、ワクチンによる䞭和抗䜓の産生やADEの発生によっお重倧な問題です。もし、䞍掻化ワクチンで免疫しお䞭和抗䜓を産生できおも、鍵の郚分が倉化したりむルスが感染したら、䞭和抗䜓は機胜したせんし、ADEによっおかえっお症状が重節化する可胜性があるからです。「スパむク蛋癜の倉異したりむルスが発芋された」ずいうニュヌスが倧きく報道されるのは、このような理由によるものです。

ちなみに、むンフル゚ンザりむルスは、毎幎、鍵の郚分を少しず぀倉化させおいたす。そこで、この倉化を予枬しお、䞍掻化ワクチン産生に利甚するりむルスの皮も、毎幎、鍵の郚分が少しず぀違うものを䜿甚しおいたす。今幎のむンフル゚ンザワクチンは圓たりだずかはずれだずかいうのは、この予枬の圓たりはずれのこずを蚀っおいたす。

 

【たずめ】

  以䞊のこずから、新型コロナりむルスに有効な䞍掻化ワクチンを開発するためには、

  1. 新型コロナりむルスがADEを生じるずいう性質を持たない。

  2. 接皮を受けた人が、ADEを起こさせないぐらいの倧量の䞭和抗䜓を産生できるワクチンを開発する。

  3. 鍵の郚分の倉化にも察応できるように、りむルスの倉異に察応しおワクチンも倉化させられる。

ずいったこずを考慮する必芁がありたす。

 ただ、今回解説させおいただいた事項は、りむルス孊の䞖界では非垞に有名な垞識ですので、ワクチンを開発しおおられる方々は皆さんすでに埡存じです。慈恵医倧では、りむルス孊の詊隓のダマで、再詊隓の時によく出題しおいたす。開発者の皆さんが、これらの事項を乗り越える良いワクチンを開発しお䞋さるこずを祈念いたしたす。

​

以䞋、5月21日掲茉分

Q: UVラむト陀菌は、新型コロナりむルスに察しお有効でしょうか。 たた、数千円から1䞇円皋床で賌入できる物で、効果が期埅できるでしょうか よろしくお願いいたしたす。

 

A: 結論から申したすず、埡家庭での䜿甚はあたりお勧めしたせん。UV(玫倖線)ラむトは、私どもの研究宀でも䜿甚しおいたすが、圱になる郚分では消毒効果が有りたせんので、党面がピカピカのアルミ匵りの箱のなかで、UVを反射させながら䜿いたす(匷い玫倖線でも、消毒には1時間以䞊かかりたす)。たた、りむルスを消毒できるような皮類の玫倖線は、皮膚ガンや芖力障害の原因になるなど、人に害がありたすし、家具などのプラスチック補品をがろがろにしおしたいたす。もちろん、機皮も波長の短い匷力な玫倖線を出すものを遞ぶ必芁もありたすが、そもそも䜿うのが難しいので、UVラむトによる消毒は実甚的ではないず思いたす。

 

Q: 新型コロナりむルスの消毒には、70%゚タノヌルや次亜塩玠酞ナトリりムが効果的ずのこずですが、もっず薄い濃床の゚タノヌルでも効果があるずか、他の消毒剀も有効ずいう話を良く耳にしたす。どのように考えれば良いでしょうか?

 

A: 消毒剀に関しおは、解説や他のFAQでもお答えしおいるのですが、ただ質問が倚く寄せられたすので、回答を远加させおいただきたす。

 70%゚タノヌルや次亜塩玠酞ナトリりムが掚薊されるのは、実甚䞊での確実性を芋蟌んでいるからです。

 䟋えば、゚タノヌルは氎よりも蒞発しやすいので、手に吹きかけた堎合や、おしがりに染み蟌たせた堎合は、゚タノヌルが先に蒞発しおしたっお濃床が䜎䞋したす。このため、消毒に必芁なギリギリの濃床の゚タノヌルでは、実際の堎面で十分な消毒効果を発揮しない可胜性がありたす。たた、実際の消毒の堎面での、吹きかけや拭き取りでは、消毒液ず手や机などが接しおいる時間は、あたり長くはありたせん。このため、短時間で効果を発揮する濃床ずいうこずも、70%ずいう数字には盛り蟌たれおいるず考えられたす。

 次亜塩玠酞ナトリりムも良くできおいたす。次亜塩玠酞ナトリりムも次亜塩玠酞氎も、有効成分は塩玠です。しかし、次亜塩玠酞氎ではフタを開けおおくず、塩玠が盎ぐに抜けおしたいたす。次亜塩玠酞ナトリりムでは、溶液をアルカリ性にするこずで、塩玠が抜け難くなっおいたす。挬けおきの消毒甚に次亜塩玠酞ナトリりムが掚奚されるのは、この様な理由が倧きいず考えられたす。

 基本的に、消毒剀に察する耐性りむルスは出珟したせんので、同じ消毒液を䜿い続けおも、効かなくなる心配は有りたせん。濃い゚タノヌルが手に入らないなど、いろいろな問題もあるかず思いたすが、個人的には昔ながらの実瞟のある方法で行きたいなず思っおいたす。

​

Q: 新型コロナりむルスが生存出来なくなる枩床はないのでしょうか䟋えば摂氏䜕床以䞋だず䞍掻性化するずいうこずがあれば、スヌパヌで買っおきた物も党郚掗わなくおも、冷蔵庫の䞭に入れずいたから安心だなどずこずにはならないでしょうか?

 

A: 「りむルスは、凍らせお殺すこずが出来たすか?」ずいう質問は、以前から良く聞かれる質問です。我々は普段、りむルスを生かせたたた冷凍保存しおいるので、「どうしおそんな面癜いこずを思い぀くの?」ず思うのですが、おそらく、「鮭に぀いおいる寄生虫を凍らせお殺す」ずいう調理法からの類掚なのでしょう。しかし、りむルス、现菌、寄生虫、の䞭で、冷凍や冷蔵にもっずも匷いのはりむルスです。冷凍によっお死ぬのは、现胞が凍結によっお砎壊されるからです。りむルスは现胞を持たないので、凍らせおも死にたせん。たた、りむルスは他の生物に寄生するたでは掻動したせんので、䜎枩でタンパク質や栞酞を安定化するず、より長期間生存できたす。

 逆に、高枩にするず、タンパク質や栞酞が䞍安定になりたすので、りむルスは死にたす。新型コロナりむルスは、5660℃で30分間加熱するず死滅するず報告されおいたすので、それほど熱には匷くないりむルスのようです。ずはいえ、「宀枩に攟眮しおおいたらりむルスが死んだ」みたいな話は、消毒法ずしおは実甚的ではありたせんので、埡泚意いただいた方が良いず思いたす。

​

以䞋、7月17日掲茉分

Q: 最近のPCR陜性者の増加に察しお重傷者、死者共に増加する傟向はみられたせん。たさに先生がお話しされおいる新型コロナりむルスの普通の颚邪コロナりむルスぞの進化が考えられたす。感染症の孊者は様々な所芋を述べおいたすが、本来この新型コロナりむルスなるものが指定感染症を受けなければならないほどのものかどうか、りむルス孊者ずしおの先生の最近のご所芋を賜れば幞いです。

 

A: たず、そもそも新型コロナりむルスを指定感染症にすべきであったかどうかずいう点ですが、私は、りむルス孊的には、これは必芁であった、むしろ、甘すぎる措眮だず考えおいたす。そもそも、新たなりむルスが発芋された堎合は、そのりむルスの感染性や病原性が刀りたせんので、たずは、最も危険なりむルス、すなわち、バむオセむフティヌレベル4(BSL4)ずしお譊戒するこずが掚奚されおいたす。BSL4のりむルスの䟋ずしおは、゚ボラりむルス、ラッサりむルスなどがあげられたす。その埌で、りむルスの性質が明らかになるに埓っお、譊戒の床合いを䞋げお行くずいうのが垞識です。今回の新型コロナりむルスの問題が倧きくなったこずの原因は、このようなりむルス孊の垞識に則した取扱いをせず、「ヒトからヒトぞは感染しない」などず適圓な取扱いをしたためであるず考えられおいたす。䜕故このようなこずになったのかは、皆さん埡存じなので、ここで曞くたでもないでしょう。

 科孊的には、埡指摘のように、最近の我が囜では、マスクず手掗いの培底によっお、「肺で増殖しお肺炎を起こし、喀痰や接觊で感染する」病原性の高いりむルスがかなり枛少し、「䞊気道で増殖しお颚邪をおこし、小さな飛沫で感染する」病原性の䜎いりむルスが増加しおいるように思いたす。ただ、海倖では、マスクの䞍培底や接觊型の挚拶のために、病原性の高いりむルスがただただ倚く存圚しおいるように感じたす。海倖から入っお来るりむルスに備えお、珟状では、新型コロナりむルスを指定感染症ずしお扱うのは、ある意味仕方がないのかなず思いたす。

指定感染症の指定解陀に぀いおは、「あ぀ものに懲りお膟を吹く」の䟋えがありたすが、初動段階での倧倱敗の圱響で、科孊的根拠ずは別の理由で、解陀する勇気がなかなか出ないのではないかず心配しおいたす。

 

以䞋、12月23日掲茉分

Q: 狭い飲食店など、換気が䞍十分な空間でも、空䞭に新型コロナりむルスの感染を阻害するような物質を散垃するこずで、換気の必芁がなくなったりするこずはあるでしょうか

 

A: 今回の新型コロナりむルスの堎合に限らず、空気䞭に散垃しおりむルスの感染力を枛らすこずを目的ずした薬剀の広告を良く目にしたす。これらの効果に぀いおは、実隓宀で薬剀が効き易い環境を敎えた実隓を行えば、効果が確認されるこずはありたす。しかし、実際の堎面で、薬剀に郜合の良い条件が敎うこずはたずありたせん。

 このため、空気䞭のりむルスに関しおは、換気をしお、りむルスを宀倖ぞ飛沫ごず远い出しおしたう方法が今のずころ䞀番有効だず思いたす。

 

Q: 新型コロナりむルスは湿床に匱いずか、湿床が高い郚屋では飛沫が広がり難いずか、郚屋の湿床を䞊げるこずが予防に重芁だずいう話を良く聞きたす。だずすれば、満員電車などの人が沢山いる空間では、窓を閉めお湿床を䞊げた方が感染予防に有効なのではないでしょうか

 

A: これも前の埡質問ず同じ問題を含んでいたす。実隓宀では、湿床が高い方が良いずか、高すぎるのは良くないなど、いろいろなデヌタが埗られるず思いたす。しかし、ここで忘れおはいけないのは、湿床の問題は郚屋に同じ量のりむルスがあるこずを前提にしおいるずいうこずです。換気をしお、りむルスを宀倖ぞ飛沫ごず远い出すこずの効果は、湿床よりもはるかに倧きいので、湿床を保぀ために換気をしないずいうのは本末転倒です。

 同じこずは手掗いにも蚀えたす。新型コロナりむルスのように消毒しにくいりむルスは、手掗いの効果が消毒よりもはるかに倧きいず考えられたす。たずは、石鹞ず流氎で手掗い、あずの工倫はその次ずいうのが良いず思いたす。

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以䞋、1月18日掲茉分

Q:䜓を冷やすず颚邪を匕くのは免疫力が萜ちるから、ずいう説明が埓来なされお来たした。ずおも玍埗できる話なのですが、「生きた现胞の䞭でしか生きられないりむルスはどこから来るのだろうか」ず疑問を持ちたした。 颚邪症候矀を匕き起こす既存のりむルスは、ヘルペスりむルスのようにヒトの䜓内に朜䌏しおいお、免疫力がおちるず颚邪症候矀をおこすずいうこずでしょうか。

 

A:ヘルペスりむルスの専門家の立堎からするず、りむルスが朜䌏するのには特殊な機構が必芁で、颚邪症候矀を匕き起こすりむルスが䜓内に朜䌏しおいるこずは、ほずんど考えられたせん。

 免疫力が萜ちるず颚邪を匕くずいう珟象は、颚邪のりむルスが、ほずんどの人では、感染しおりむルスが増殖しおいおも症状を出さない䞍顕性感染で流行しおいお、免疫力が䜎い人でのみ症状を珟すずいう状態なのだず考えられたす。

 新型コロナりむルスで、䞍顕性感染の若者がりむルスを広げおいるず蚀われおいるのは、これに近い状態だず思いたす。

 ここで倧事なのは、免疫力が倚少匱くおも、入っおくるりむルスが少なければ、免疫力がりむルスに打ち勝っお、発症を抌さえたり、排出するりむルスを枛少させたりするこずができるこずです。

 党員でマスクず手掗いをしっかりずするこずで、入っおくるりむルスを少なくするこずは可胜です。

 以前、新型コロナりむルスは、マスクをするこずで、肺から出おくる痰に含たれる病原性の高いりむルスを消しお、感染力が匷いけれど病原性の䜎いりむルスを流行させるこずができる、ずいうお話をさせおいただいたこずがありたす。欧米の惚状に比べるず、日本はこのこずに成功しおいるず思いたす。さらに党員でマスクず手掗いを励行するこずで、新型コロナりむルスに打ち勝おる人を増やすこずができれば、流行そのものも枛らすこずができるず期埅したす。

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